1982年9月8日水曜日

楽しく黙々と走る日々 稚内~宗谷岬

久しぶりに一人で走り出す。朝から雨が降ったり止んだりしてどうするか迷ったが、結局走ることにした。

宗谷岬にもう一度行って両親に夫婦ちゃわん(湯飲み)を買い、送る。

このあたりから、自転車やオートバイのツーリストが増え出す。毎日出会いと別れが有った。

一つの駅に1、2週間とどまっているオートバイ乗りが居た。話しているとお昼になったので食事の用意をしていると、彼はおもむろに弁当箱を取り出した。変な表現だが「普通の弁当」である。かわいいハンカチで包んであった。話を聞くと、ここにとどまって数日すると、通学の女子高校生と知り合いになったらしい。そして彼女は毎日彼の弁当を作ってくるようになったという。これは羨しい話だ。

駅の入口近くで夕食の用意などしていると、時々会社帰りの人に声をかけられる。

地べたに座ってごはんを焚く僕の横に座り、

「それ何?」

「ごはんです」

「良い匂いだね」

「でしょ?」

「旅行?」

「日本一周です」

「ふーん、良いなぁ」

そして、じゃね、と去って行く。

中には、いきなり近づいて来て「飲めよ」なんて言って酒を置いて行く人もいた。みなやさしい。